ワークショップを終えた一行はその後、足助名物である「猪肉」などに舌鼓を打ち、浴衣に着替えて「夜念仏と盆踊り」の会場となる綾渡町へ。足助町から東へ5km、標高500mの山間に点在する約30戸の山里です。
日が暮れて闇が落ち始めた山道を車で進むこと約10分。綾渡町に到着しました。車を降りると標高の高さからか、足助町よりも少しひんやり。もう「夜念仏」が始まっているようで遠くのほうでは鉦(かね)の音が聞こえていました。月明かりのなか、道の左右に設けられた明かりに導かれるように、会場となる綾渡町の平勝寺(へいしょうじ)へ。
そこはすでに浮世離れした雰囲気が漂っていました。暗闇のなか灯篭の光に照らされた人たちが鉦をたたき、念仏を唱えています。
夜念仏(※)は1年のうちに亡くなった人の霊を慰めるために、毎年8月10日と15日に平勝寺の敷地内を鉦(かね)を叩きながら念仏を唱和して練り歩く行事のこと。かつては他の地域でも行われていましたが、今なお残るのは綾渡だけということもあり、近年は観光客も多く訪れています。
※参照:豊田市足助観光協会「綾渡夜念仏と盆踊り」
お寺という昔から残る場所で月明かりのなか念仏に聞き入っていると、タイムスリップしたような、どこか遠いところへ来たような感覚に。参加者も時おり空を仰ぎながら、思い思いに過ごしていました。
綾渡の盆踊りは江戸時代からつづくと言われる、楽器を使わず歌や下駄の音に合わせて踊るもの。1997年には国の重要無形民俗文化財に指定されています。
境内の中央に地獄と極楽の絵が施された二基の「折子灯籠」が立てられ、それを取り囲むように人々が輪になりました。
「音頭とり」と言われる人の発声をきっかけに、盆踊りがスタート。
ずっと歌い継がれてきた恋模様などを描いた歌を10曲、休みなく連続で踊る綾渡の盆踊り。音頭とりにつづいてすべての踊り手が歌い、下駄が地面を蹴る音が重なり合うその様子は、大きな流れのなかで性別も年齢も立場も踊りの上手い下手もこえて、全員がひとつになるような感覚がありました。
無心になって踊っていると10曲はあっという間。その場にいる全員で踊りきった達成感と爽快感を共有しました。
盆踊りを終えて感動冷めやらぬなか、7名で輪になって振り返りを行いました。
「無心で踊ってスッキリした」「何十年ぶりに踊ってこどもに戻ったよう」という人もいれば、「上手く踊れない!」という気持ちで頭がいっぱいだった人、実は身近な人の初盆で故人との思い出に浸っていた人もいました。
最後の参加者の発表が終わるや否やメンバーの頭上に花火があがり、全員で夜空を見上げるかたちに。一人ひとりの胸にはさまざまな思いが渦巻いていたと思いますが、みんなどこか晴れやかな顔をしていました。
そもそも綾渡町の盆踊りは、かつてあった地域外の人々からの言われなき差別を無心で踊ることで跳ねのけるために始まったものだとか。つまり盆踊りは、心と体のバランスをとるための先人たちの知恵の発露と言えるのです。私たちがワークショップでたどり着いた「集中する」「ゾーンに入る」ことの大切さを、昔の人は日々の暮らしを通じて肌感覚で知っていたのかもしれません。
この日、私たちが体験したことは、かつて日本のどこを見渡しても行われていたようなこと。くらしも仕事も人間関係も、すべて地域とともにあるのが普通でした。現代社会では、どこに住もうがどんな職に就こうが、何かにしばられることはありません。
しかし、そんな自由と引き換えに失ってしまったものもあるのかもしれません。生き方や働き方は変わっても、きっと人の心は変わらない。だとすれば、この日私たちが体験し感じたことは、現代の「はたらく」を考えるうえで大きなヒントになるはず。まずは私たち一人ひとりがよりよい働き方を模索しつつ、みんなが心地よく生き、働ける社会について考えつづけることを誓い合い、綾渡町を後にしました。
今の仕事や働き方にモヤモヤを感じている方は、ぜひ来年、綾渡町でお会いしましょう!
■コピーライター : 松田広宣
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