REPORT

江戸時代からつづく「盆踊り」が、ビジネスパーソンに教えてくれたこと。<前編>

はたらく×Cueから生まれたプロトタイプ

「今の仕事にそれなりのやりがいは感じているけど、まだまだやれる気がする」「もっと自分らしく働ける方法があるはずだ」 ─── 働いているとそんなモヤモヤを感じることがありますよね。
そこから一歩踏み出すのにうってつけのイベント「ビジネスパーソン×盆踊り=クリエイティブ!」が去る8月10日(土)に開催されました。「働き盛りの男女が山奥の集落で弔いの行事や盆踊りに参加して気づきを得よう」というこの企画。
ビジネスパーソンと伝統行事。両極に位置するようなこの2つが出逢ったとき、働き方や生き方さえもかえりみるほどの大きな気づきが生まれました。集合から解散まで約7時間にわたって行われたディープなイベントのレポートを前後編でお届けします。

江戸時代から続くと言われる綾渡の盆踊り 楽器を使わず歌や下駄の音に合わせて踊る

 

 

 

悩めるビジネスパーソン、足助へ。

会場となる豊田の山奥へ 徐々に増えていく自然に期待が高まる

Cueのある名古屋駅前から車で約1時間。車窓を流れる景色に民家が少なくなり、山や川、「鮎料理」「猪料理」の看板が増えはじめた頃、紅葉の名所・香嵐渓(こうらんけい)を有する豊田市足助町(あすけちょう)に到着しました。
この日のプログラムは、夜に豊田市綾渡町(あやどちょう)で行われる「夜念仏と盆踊り」とだけでなく、そのマインドセットも兼ねた昼のワークショップの2部構成。古くから地域のコミュニティスペースとして活用されてきた足助町の交流館に、ファシリテーター1名を含む多彩な7名のビジネスパーソンが集いました。

ファシリテーターは研究舎ヨハク/sayaka ono graphic代表の小野さや香さん

まずはチェックインとして簡単な自己紹介と本イベントへの期待など率直な気持ちを発表。
盆踊りなんてこどものときにやって以来何十年ぶり。非日常にワクワクしている。普段はイベントの運営側にいることが多いので今日は参加者として楽しみたい。こどもが熱を出して夫に預けてきたので落ち着かない ─── などなど胸の内はさまざま。
しかし、顔見知りの人もはじめましての人も。「はるばる足助町まできた」「このエッジの利いた企画に参加した」という共通点が心の距離をぐっと近づけ、なごやかな雰囲気のなかゆるゆるとスタートしました。
ぜひ、ワークショップに参加しているつもりで読み進めてみてください。

 

分自身の内なる世界へ、いざ。

止まっているように見える雲も、よく見るとゆっくりと空を流れている

「景色を見ましょう」

さぁ、どんなお題が出るのかとかまえると、ファシリテーターから意外な提案が。一旦席を立ってみんなで窓の近くへ移動しました。促されるまま、まず建物の裏を流れる清流に目を向け、次に山の上に視線を移し、雲の流れが感じられるようになるまでしばし黙って静かに心をととのえました ─── 。お祭りに向けて練習しているのでしょうか。どこかで和太鼓を叩く音が聞こえていました。

約2分間の静寂のあと「席に戻りましょう」の声がけで着席。その後、ファシリテーターからワークショップのゴールとそのプロセスについて説明がありました。

自分の心に降りていく そんな話に真剣に耳を傾ける

「今回のイベントのテーマはビジネスパーソンとクリエイティビティです。U理論(※)に基づいて自分自身を内観し、根源的な欲や喜びにフォーカスしながら、足助の自然、夜念仏、盆踊りという非日常が自分自身のクリエイティビティをどう高めていくのか、そのプロセスを体感してほしいと思っています。」
まず、投げられた問いは「いま課題に感じていることは何か」ということ。みんな悩んでいるのか、考え込んでしまうことなく、ずっとペンを走らせる音が聞こえていました。

年齢も立場も異なる7人の課題には、意外にも多くの共通点が

「やりたいことがたくさんあるのに、体がついていかない」

「集中できる時間がつくれない」

「子育てをするようになって、独身の頃のように仕事をやりきることがむずかしい」

「常にタスクに追われている」

「やりたい仕事と今の仕事がマッチしていない」

「コミュニケーションの手段が多様化するなかで何が正解かわからない」

共感できる意見も多いのではないでしょうか。発表の場でも「わかる!」と共感の声があがる場面がたくさん見受けられました。

 

※U理論=MIT(マサチューセッツ工科大学)上級講師のオットー・シャーマー博士が世界の多様なトップリーダー達130名にインタビューし紡ぎ出した理論のこと。リーダーの「やり方(Doing)」に着目するのではなく「あり方(Being)」に着目する点が特徴で個人の変容や組織のイノベーションのために活用されています。

 

答えは“心地よさ”のなかに。

普段は話さないような本音も、この場だと不思議と素直に話せる

年齢やライフステージ、会社での立場などは異なるにもかかわらず、「私と同じことで悩んでいる」という発見のあったひとつ目の問い。
「みなさんの課題には共通項がある」として、ファシリテーターは「自分のあり方」に目を向けることを提案。そのプロセスとしてふたつ目の問いが投げかけられました。
「あなたにとって、心地よい瞬間とは?」
課題に感じているものがあるということは、現状は自分の心地よさからかけ離れてしまっているということ。自分が本当はどうしたいのか、どういう状態がベストなのか。一人ひとりが心と体にとっての「心地よさ」を見つめ直しました。

すると、不思議な結果に。時間を忘れて集中しているとき。無心で筋トレをしているとき。童心に戻って遊んでいるとき。家に帰って自分をオフの状態にしているとき。それぞれ手段は異なるものの、無我夢中で没入できることに心地よさを感じていたのです。
ファシリテーターいわく「それこそが人間としての幸福。心を充電するために必要なもの」で、課題に感じていることがある状態は、本当にやりたいことに制限がかかり漏電している状態。だからこそ、過度なストレスや疲労感を生じるのだといいます。
「自分が集中できるもの=自分の幸福」。その図式を聞いた参加者は、「だったら」と自分の生活における集中できている時間、作業、場所などについて次々と想いをめぐらせては共有していました。

 

人生を変えるかもしれない“宿題”。

誰もがまっすぐに自分と向き合ったからこそ、多くの対話が生まれた

しかし、はたと立ち止まったように一人の参加者から質問が挙がりました。
「集中できる時間が大切なのはわかりました。でも、会社に属していたり、子育てをしていたりとコントロールできないことも多いなかで、集中できる時間をどう作ればいいのですか?」
それが、今回のワークショップの最後の問いになりました。「妨げてくるものを物理的に遠ざける?」「午前中の2時間だけ、など時間を決める?」などファシリテーターと参加者で対話をしながら辿り着いたのは、「自分で集中できる時間を取りに行こう」という答えでした。

自分が集中しやすい行動、時間帯、場所、音、香り、飲み物などの条件を知ることができれば、これからは心地よさを自分たちでつかまえに行けるんだ、と。
「自分を知り、どんな状況であってもすぅーっと集中できるようになること。そうすれば心と体が一致し、同じことをするにしてもエネルギーロスを限りなくゼロに近づけることができる。普段の生活に戻ってそんな状態を確立することが、皆さんへの宿題です。」
そんな人生の宿題が出されたところで、話はその後に行われる「夜念仏と盆踊り」のことへ。

夜念仏と盆踊りで考えるべき問いを心に留め、会場へ

宗教やお祭りなどは、現代社会のビジネスシーンでは排除されている世界。しかし、これも一種の没入体験として自分に取り込んだときに、仕事や生活、そして生き方にどんな影響を与えうるのか。それを感じながら過ごしてほしいという案内がありました。
そして「可能であれば」と付け足されたのは、夜念仏と盆踊りを体験しながら「自分はなぜこの世界にいるのか」「この世界で何を喜びとするのか」を見つめてほしいということ。自分の存在目的である「私はこのために生きてたんだ」というものをつかめたら、人生が変わりますよ、と。
約3時間に根源的な欲にまで踏み込んだ互いを拍手で称え合い、ワークショップは終了。
ここまでもなかなかにディープな内容をお届けしましたが、いよいよ後編では「夜念仏と盆踊り」に足を踏み入れます。

浴衣に着替えて出発 ますます期待と緊張が高まる

 

■コピーライター : 松田広宣

 

 

 

はたらく×Cue

はたらく×Cueは、共創を担う多様なプレイヤーがCueに集まり、 お互いの経験や強みを活かし合いながら、チームを組んで組織の壁をこえて、「人々の『はたらく』をワクワクさせる」新しい価値を生み出すプロジェクトです。

 

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