トークセッションは、WORK MILLの現・編集長の山田から「これまでの働く環境はどのようなものであったか」を振り返るインスピレーショントークからスタート。
もともと、オフィス・事務スペースのレイアウトは工場など生産現場の管理方法論がもとになって考えられ、同じものをいかに効率よく大量に生産するか、また管理できるかというところが主軸とされていた、と山田は説明します。現在では、ABW(Activity Based Working)がトレンドとなり、オフィスの中でも働き方に対して多様な空間が生まれています。
ここで、新型コロナウイルス感染症によって変容している3つの要素が山田から提示されました。
箱(Place/Platform)・間(Distance/Time)・群(Community/Communication)です。
箱(Place/Platform)の変容とは、たとえば住むための箱である住宅が働く場になったり、会議などのオンライン化によりリアルでなくデジタルの箱でのコミュニケーションが主となり加速したということです。
間(Distance/Time)の変容は、ソーシャルディスタンスなど物理的な間・距離の必要性と、逆にリモートワークによる距離のゼロ化、さらに効率重視のデジタル化によって時間のムダや余白がなくなり、時間の観念が変化している、という点です。
群(Community/Communication)は、同僚に囲まれて仕事をする当たり前から、在宅勤務などテレワークの普及により、ひとりや家族に囲まれて働くようになった、という対人関係の変化です。
もともとこの3要素が少しづつ変わってきていたところ、新型コロナウイルス感染症により加速的に変化が進みました。
もともとは柔軟な働き方の選択肢のひとつであった在宅勤務も、今回、強制的に多くの人が実践することになりました。この経験を皆がポジティブに捉え、感じたことや学んだこと、得られたものをいかにつないでいくか、いろいろな立場の視点からの検討が必要であり、まずは議論してひとりひとりが意見をだしていくことが重要だ、と山田はインスピレーショントークを締めくくりました。
ここで、山田から遅野井にバトンタッチです。オフィスの変遷を過去からさかのぼった山田に対して、未来の視点からのいま・これからの「はたらく」を語ります。
オカムラでは約1年前半に、未来の働き方や生活のイメージ動画を制作・公開しました。タイトルを「Tomorrow Work 202X: OKAMURA Future Vision」とし、少し先の未来を描いた映像です。この映像にちりばめられたキーワードから、これから訪れる社会は「すべての制約が制約でなくなる社会」である、と遅野井は言います。これまで働く上での制約になり得た子育てや介護といったライフステージの変化、ケガや病気等からくる身体的な特徴などが働いたり活動する上でのハードルではなくなる社会になる、と語りました。
後半は、2人の経験したWORK MILLの取材・編集を振り返りながらアフターコロナの働き方のキーワードを考えました。
まずは、創刊準備号、ISSUE 01、ISSUE 02に編集長として、ISSUE 03にはアドバイザーとしてかかわった遅野井から。
学びの3ポイントを、1. 持続可能性の高い働き方、2. 幸せな働き方、3. オルタナティブの受容とまとめました。そして、さらに「他者への寛容さ」が必要となるのではないか、と提起します。他者に対して優しくいられるか、ということは今後の働き方の大きなテーマになる、と言います。ニュージーランドのアーダーン首相が語った「Be kind」、他者をおもいやりコミュニケーションをとる、ということがこれからの社会では重要になってくると言います。
これをうけて、WORK MILL臨時号を取材・編集中の山田から、今回の取材でも「kind」は多く語られていた、とコメントが入ります。例えば、リモートでつながる無機質な関係性にどうやって思いやりを持たせて有機的につながっていくか、という課題感が挙げられているといいます。オンラインでつながる中でプライバシーが見える瞬間など、いままでなかったことが起きています。不快な思いをする瞬間があったとしても、寛容さがないと、快適性や生産性は保てない、と言います。ツールやテクノロジーを駆使して働く、その一方で人間性やカインド、マナーを担保していかないと新しい働き方は成り立たない、とコメントしました。
さらに、WORK MILL ISSUE 03以降、編集長を務めている山田から、これからのオフィスはどうなっていくか、という視点で話が続きます。
ISSUE 04では、「愛される会社」をテーマに、D2C企業を中心に取材をし、なぜ人気や共感を得て愛されているかを紐解きました。ここで見えてきたことは、どのようなビジョンやパーパスを持ってビジネスをしているか、が重要だということです。取材で取り上げた企業の店舗のように、想いを共有する場所としてのオフィスが求められるのではないでしょうか。
ISSUE 05では、「アジアの新・仕事道」として、東アジア諸国の企業を訪ねました。これまでの取材から、今後のビジネスにおいて重要になってくるキーワードには、東洋的な思想が重要と考え、テーマとして取り上げることにしました。
ISSUE 05で取り上げている事例で台湾の誠品書店があります。彼らは、書店を本を売る場所として構えていません。本に触れるのが大切であるという考えに基づき、書店という場所をつくっています。本に触れてほしい、読書という文化を絶やさない、文化をつくる、文化的な場所でありたい、という想いでビジネスを展開しているのです。 これもオフィスに問われている部分です。文化構築する場所としてのオフィスが今後必要とされるのではないでしょうか。
山田の話を受けて、遅野井から「持続可能性というテーマが号を追うごとに深まっている」、というコメントが出ます。山田は、「時代の流れとして経済的な価値をどう生み出すかということと同時に、自分たちだけじゃない、社会や地球環境も考えたうえでどのようにビジネスや働き方をつくっていくかを考えていかなければならない」と返します。
オカムラは、新型コロナウイルス感染症へ対応していくにあたって、3つのフェーズにわけて考え方を整理しています。緊急事態宣言下の「エマージェンシー」、緊急事態宣言後の活動自粛などが続く「ウイズ」、そしてワクチンなどの開発によって行動制限が解除される「アフター」です。この3つのフェーズに合わせて、「ウイズ」をどうするか考えたうえで、「アフター」にどう向かっていくかを考えていくかの議論が必要です。「アフター」では「ウイズ」で実施した新しい工夫を続けていくのか、もとに戻るのか、別の方向に進むのか、考えていかなければなりません。
具体的にオフィスをどうしていくか、という点については、オカムラとしてレポートをまとめています。リモートワーク・在宅勤務についてのレポートも発行しています。このレポートでも触れている、これからのオフィス環境について、山田が語ります。
オフィス・コワーキングスペース・自宅などで働くことが可能となり、これからは働く環境と組織が分散していきます。働く個人や企業においてどの環境をどのくらい使うのか見極める必要性があると言えます。
その際の考え方として、「働く環境のポートフォリオ」をつくることです。これまで、オフィスは経済性や地理性を考えてつくられていました。これからは、オフィス以外の場所も包括的に働く場所を考え、ポートフォリオを組み替えていく必要があります。経済性や地理性だけでなく、従業員のニーズや自分たちの事業で目指すものなどを総合的に考えて、どの場所をどのくらい活用して自分たちの企業として働く環境にするかを選んでいき、さらに選んだ場所にどういう意味を持たせるかが重要となります。オフィスだけでなくすべての場所を働く場ととらえて「ワークプレイスマネジメント」をしていくことになります。難しいのは正解がは企業によって異ることです。経済合理性以外の目的や意味をそれぞれの環境に対してどのように位置づけるか、を考える必要があります。
さらに、場所でのエクスペリエンス(体験)をどうつくるのか、を考えていかなければなりません。働く人がいる場所が働く場所になります。その人がいる場所がワーカーや組織にどういう価値があるかが重要です。在宅勤務で、家族と触れ合う時間が増えて生産性や幸福度が高まったり、オフィスでパーパスやパッションを共有できたり、多様な体験が存在します。どういった体験をつくっていくか、与えていくかを考えながら、環境は構築されていくことになります。これは、どの企業もこれから取り組んでいくことで、みんなで考えてベストプラクティスをつくっていければと考えています。
遅野井からの、「組織やチームの一体感も一層問われていくことになる」という投げかけに、山田は「働く人をどうやってつないでいくか、は重要な課題」と答えます。手段としてのデジタルツールを活用していくことは大切なことではあるが、一方で企業やチームにビジョンやパーパスの浸透がますます重要になってくる。そこでつながっているからこそ、分散した環境でも生産性高く、幸福度高く働けるようになる、と言います。
ファシリティ担当や総務・人事担当がつくって与えていた環境から、経営者と従業員が一緒になって真のワークプレイスとして広くとらえてどうしていったらいいのか考えていかなければならず、その手法は、まだ明確にあるわけではありません。みんなでつくっていきたいと考えています。
最後に、山田から「WORK MILL with Forbes JAPAN」は、世界の価値観の流れを追っているリサーチと考えています。世界の価値観が同じ危機で揺れている今、次はどうなっていくのか、価値観がどう変化するかで、ビジネスが変わり、働き方とそれを支える環境が変わっていきます。働き方はまさに価値観の鏡であると言えます。「個人の価値観、組織の価値観、社会に対する価値観、この3つをとらえながら、WORK MILLでは新たな「はたらく」を探究し、発信していきます。」という山田の言葉でトークセッションは締めくくられました。
このイベントの開催された5月22日は、「WORK MILL with Forbes JAPAN EXTRA ISSUE」(臨時号)を準備中でした。これまでの手法での取材ができない状況下で、オンライン取材で編集を進め、6月30日に発刊となりました。これまで取材をしました多様な先駆者たちのインタビューを中心に新型コロナウイルス感染症で激変する未来を問う臨時号です。より多くの読者へお届けすることを目的に、通常の紙媒体と同時に電子版を発刊し、無償で公開しています。
「WORK MILL with Forbes JAPAN」の現編集長と初代編集長の対話から、アフターコロナ/ウイズコロナの「働く環境」のいくつかのキーワードが浮かび上がったトークセッションとなりました。ウイズコロナでの働き方、ニューノーマルの模索が続くなか、「これからのはたらく」をみなさんと考えていくことがますます重要であることも語られました。Cueでは今後も、新しいテクノロジーやツールを取り入れたり、工夫や試行錯誤を繰り返しながら、「これからのはたらく」をみなさんと考え、対話し、描いていきたいと考えています。
REPORT
今回は、金城学院大学の2年生16人が授業「ソーシャルウーマンプロジェクト B」の一環でCueにやってきました!
「ソーシャルウーマンプロジェクト B」では、「共創」をテーマに、身近な困りごとや社会課題に対する解決方法の生み出し方について、グループワーク、プレゼンテーション、フィールドワークをまじえながら学び、現代社会におけるさまざまな課題を自分ごととしてとらえ、発想力豊かにその解決方法を仲間と一緒に考えていくプロジェクト学習です。そのうちの3回にわたりCueと実施します。今回はフィールドワークの初回です。
当日の様子をインターンシップ生の髙橋あひろがレポートします。
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REPORT
現在金城学院大学さんのソーシャルウーマンプロジェクトBという講義にCueが一部かかわっています。金城学院大学 人間科学部コミュニティ福祉学科の講義である、ソーシャルウーマンプロジェクトB。受講者の皆さんに共創という概念を理解・実感していただくための第一歩として今回、 MENNOLU LABO ・Cueの見学、また感じたことの共有を実施しました。
インターンシップ生の秀徳颯斗がレポートします。
※ソーシャルウーマンプロジェクトBとは
「共創」をテーマに、身近な困りごとや社会課題に対する解決方法の生み出し方について、グループワーク、プレゼンテーション、フィールドワークを交えながら学びます。現代社会におけるさまざまな課題を自分ごととしてとらえ、発想力豊かにその解決方法を仲間と一緒に考えていくプロジェクト型学習です。
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REPORT
名古屋市立大学佐藤研究室の学生方と株式会社カムロの方が、改装されて新しくなったCue・MENNOLU LABOにやってきました!
はじめまして!私は、名古屋市立大学芸術工学研究科修士1年の高橋あひろです。
学部時代も名古屋市立大学に所属していて建築都市デザインを学んでいました。卒業論文では、Cueで実際に行ったワークショップを研究対象とし、ワークショップにおいて参加者の身体的自由度や用いる什器が議論の盛り上がりにどのように影響しているか、について執筆しました。大学院でも同じテーマを引き続き研究しています。
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「これからのはたらく」を知りたい方、考えたい方、つくりたい方、相談したい方、見学したい方、仲間が欲しい方・・・
もし少しでも「ピン」ときたら、お気軽にCueにおたずねください。