REPORT

人とつながる未来人 in NAGOYA

はたらく×Cue

企業・行政・NPOなどの枠を超えて集う多様な方々とともに、10年後のNAGOYAらしい「はたらく」をみつけるプロジェクト、はたらく×Cue。
2017年10月20日に開催したセッションに掲げたテーマは「人とつながる」。10年後のNAGOYAに影響を与える変化の兆しを集めつつ、NAGOYAのユニークな「はたらく」をCueにお集まりいただいた全員で考えました。
未来のNAGOYAでは、どのような人たちがどのようにかかわりあって「はたらく」を実現しているでしょうか。今回は、ゲストに人と人をつなぐ未来の「はたらく」に関連する新たな取り組みをご紹介いただき、参加者同士で対話をしながら、新しい働き方の可能性や自分自身ののなりたい姿、10年後の名古屋圏のユニークな変化を描きました。

イントロダクション ~ 今日、参加したきっかけ ~

セッションは、参加者どうしの対話からスタートしました。テーマは、「本日参加したきっかけ」。いろいろなきっかけでこの日、Cueに集まったみなさんが、ここから2時間30分、疑問や想いを共有するとどんな10年後のNAGOYAが描かれるでしょうか。ワクワクする時間が始まりました。

インスピレーショントーク 1 ~ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役 塚本恭之さん~

ペア対話の次は、パラレルワークを実践されている、ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役の塚本恭之さんに東京からお越しいただき、未来の「はたらく」を考えるヒントをお話いただきました。塚本さんご自身の今の働き方からこれからの働き方への考え方のお話まで、みなさん熱心に耳を傾けていました。

 

「越境学習でつながろう」

自己紹介

本業はナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役と一般社団法人企業間フューチャーセンターの代表理事を行っています。他に複業として4つの組織に関わっています。
最近「副業」という表現から、「複数」という表現に変わりつつあります。政府も未来予測などで複業という表現に変えています。

 

プロボノとは?

プロボノとは、ラテン語で「公益のために」という意味です。職業の能力を活かして公益活動に無償で関わる活動のことです。
最近では、企業の方が専門性を活かしてNPO支援をしていたりします。

 

サラリーマン時代の話

3年前までは、私はサラリーマンでした。
入社してから、20年ぐらいまでは調子よく働けていたんですが、20年過ぎたあたりで社内失業しました。交流の深かった役員がパワハラで失脚し、会社にいづらくなり起業しました。
起業後は自由に働けるので、平日の昼間に原宿をウロウロする時間も取れたりするので、海外芸能人に出会ったこともあります。

ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役 塚本恭之さん

今の働き方について

どうして働くのか?(why)

自分も会社員のときは、そうでしたが、毎日つらくても満員電車に乗って会社に行く。
「それが勤めというものだから」。
今は、やりたいこと、成し遂げたいことがあるから、働く。もちろん生きるための糧を得るために働くのは、どちらも前提としてあります。

 

何をやるのか?(what)

これまでは、勤めている会社の中で価値を提供する。
独立すると、さまざまな会社に対して価値を提供する。これは大きな変化でした。

 

どこで働くのか?(where)

前職のときは、本社は東京の初台にありました。普通のオフィスです。社内失業にあうと、本社から離れた田舎の建物で働くことになりました。
今は、複数のコワーキングスペースで働いています。全部合わせても安く借りられています。さらに、岡村製作所の東京にある共創空間「Sea」と「Saw」も使わせてもらっています。

 

誰と働くのか?(who)

独立していなかったら、普通は会社の人たち(上司・部下)。本社の人、取引先の人たち。会う顔はほとんど変わらないですよね。
今は、中小企業の経営者、大企業の人事や企画担当、ベンチャー起業家、女性起業家、大学の先生、社会起業家など、色々と広がっていきます。

 

いつ働くのか?(when)

以前は、朝起きて通勤してから、ずっと会社にいました。会社の中でずっと仕事をして、帰ったらずっと休みになり、オンとオフがくっきり分かれていました。
今は、朝起きてメールを見て、家事をして、自宅で事務処理をした後に、サードプレイスに行きます。夜はイベントに参加したり、イベントを自分で開催したりして、仕事とプライベートが混ざっています。23時頃にまたメールをするのですが、この時間だとお子さんがいる女性の方と密に連絡できます。お子さんがいる女性と働く時間となっています。

 

お金の話(How much)

会社にいるときは、給与が毎月25日に自動振込されていましたが、今は、計算をしていたり、振込作業をしていたり、月の半分はお金のことを考えています。

 

まとめ

自分のやるべき仕事のことや、なぜ働くのか?をよく考えるようになりました。何をやるのか、うまく伝わるように話す必要が出てきました。コンビニの休憩スペースとか、ちょっとしたスキで仕事します。税金や社会保障など、お金のこともよく考えるようになりました。不謹慎ですが、以前は台風とか天変地異があると、会社を休める!と思っていましたが、今はミサイルが来るとか、本当に勘弁して欲しいです。前向きになったのと、人との接点がありがたいと思えるようになりました。

 

社外の学び「越境学習」について

学び方には「実践志向」と「学習志向」があり、それに「なにかおもしろいことがないか?」という「弱い目的」のものと、「これを学びたい」という「強い目的」を持って学ぶものがあります。
例えば、公開講座などはこの2つの軸の中央にあり、MBAや大学院などは、「学習志向」で、かなり「強い目的」で学んでいると思います。今回のセッションのような場は、「実践志向」で「何かキッカケがないか」、「弱い目的」で参加されているのではないでしょうか?複業やプロボノなどは、「実践志向」で「強い目的」をもった学びだと思います。

 

社外の学びの効果

社外の学びでは愚痴を言いづらくなります。会社の愚痴をわざわざ外の人に話さないので、前向きな話になりやすいです。年下、年上が関係ないです。自分の強みを考えながら話すようになります。自分の仕事を一般化し、自分の強みやポジションを考えるようになって、ちょっとスマートになります。

 

皆さんにやってもらうといいこと

社外の方と出会うために、フューチャーセンターに行ってみる、自分でセッションを開催する、プロボノもやってみるといいのではないでしょうか。会社の名刺とは別に、自分の名刺を作ってみるのもおすすめです。イベント登壇は自分で企画してでもやってみるといいです。ブログや連載も積極的にやってみるといいです。

 

人とつながる

これまでは、ビジネスとプライベートをしっかり分けていましたが、隔たりがなくなっていきます。仕事の付き合い、プライベートの付き合いと、割り切れない関係性、ゆるいつながりが増えてきます。

 

これからの仕事のしかた

これまでは、トリクルダウンといわれるような、上から仕事が降ってくる状態だったと思います。上がおいしくて、やらなきゃいけないことが下に落ちてきて、現場が大変という状態です。これからは、仕事が真ん中にあって、チームでそれぞれ何ができるかをリーダーシップを発揮して進めていくやり方です。シェアドリーダーシップという考え方です。

 

プロデューサーの仕事

マイケル・ジャクソンの歌に「Human Nature」という曲があります。クインシー・ジョーンズが気に入って、マイケル・ジャクソンに歌わせようとしました。曲ができ上がるまでに、誰が中心かわからない状態でいい曲ができあがる。チームでいい仕事、成果を出すためにプロデュースの仕事があります。

 

フリン効果

現代では学習が「分類する」「抽象概念を扱う」「仮説を受け止めて思考する」というように、より科学的な学習になってきているため、IQが100年前より30ポイント上がっているとジェームス・フリン教授が提唱しています。パラレルキャリアによって、いろいろな立場で仕事を捉え直すことができるため人のIQが上がる、賢くなるのではないかと考えています。

 

イノベーションとは

組み合わせによる新しい価値の創出。0→1で何かを生み出すのはクリエーションです。いろいろなものが集まり、新しい組み合わせをしやすい東京は、イノベーションに有利です。先日とある家具会社の方と話しましたが、東京には日本全国から木材が集まります。地方では、もちろんいい木材なのですが、地元のものしかありません。東京だけが、日本全国のモノを集めている状態です。

名古屋などの地方都市は、東京のモデルをパクりながら、かつ地域の強みを出すと、東京に負けないかたちになるのではないでしょうか。名古屋ならではのイノベーションに期待しています。

 

複業、プロボノ、学び… 未来のはたらくをインスパイアするお話でした

塚本さんのお話をうかがったあとは、感想を隣の人と共有し、Q and Aに移りました。

 

Q : 企業勤めだと、お金のことをあまり考えないですが、そうでないと月の半分もお金のことを考えるのは新しい気付きでした。お金に関する業務は楽しいのでしょうか?

A : 必要に迫られてお金に関する業務をこなしていて、気持ちとしてはネガティブです。全体の仕事としては、やりたいこと選んでいますが、その中でやりたくない仕事も出てきます。ただ、人間が生きていてやりたいことばかりでないので、仕事でもそういうものだと思っています。また、自分が本当に「やりたいこと」と「やりたくないこと」がはっきりします。

 

Q : 私自身、普段は企業に勤めていて、プロボノにも参加しています。仕事とプロボノのバランスをとるのが難しいですが、どうされていますか?

A : プロボノや越境学習、複業の時間にかける時間や回数を制限して、休む時間をしっかり取っています。例えば、プロボノは週3日までしかやらない、とキャップを決めます。

 

Q : 起業してから、どのように気持ちが変化しましたか?

A : 会社にいると、自分の能力に関係なく、持ち上げられたり落とされたりします。外に出て、プロボノとしてNPOなどをサポートすると、等身大の自分の能力で人の役に立つことができ、感謝され、自己有用感が高まります。
また、起業してからは、自分のペースで仕事ができ、気持ちを保てているので、そこからさらに自分がどう役に立てるかを考えることができて、前向きになりました。

 

Q : 人に会う、つながるには向き不向きがあるのではないでしょうか?

A:私自身、実は内気な人間で、人に会うのが苦手なのですが、だからこそ逆に、意識して外に出ないといけないと思っています。しかし、「ビジネスしましょう!」という無意味な肉食系が集まるような異業種交流会は苦手なので、セッションなど目的意識を持ったゆるいつながりが可能な場に行くことが多いです。

 

実際にプロボノに参加されている方からのご質問や、起業後のお金の話など、いまの働き方から一歩踏み込んでみるとどうなるか?塚本さんがどうされているか、対話が深まりました。
まだまだ塚本さんにお話をうかがいたかったですが、続いて次のゲストにお話をいただきました。

 

 

インスピレーショントーク 2 ~ 一般社団法人メディア・アンド・クラフツ 中原淳さん・山口歩那さん ~

岐阜県本巣市根尾地域からいらしていただいた、一般社団法人メディア・アンド・クラフツの山口歩那さんと中原淳さん

次のゲストは岐阜県の本巣市でシェアスペースを運営されている一般社団法人メディア・アンド・クラフツの山口歩那さんと中原 淳さん。岐阜の山の中から描く、10年後の「はたらく」を考えるヒントをお話いただきました。

山口 : 一般社団法人メディア・アンド・クラフツの山口と中原です。今日は「はたらく」を考えるということで、私たちが運営している「GIDS」というシェアスペースの紹介を中心にお話しします。その中で出てきた疑問なども共有していけたらと思っています。

まず「GIDS」とは何ぞやということですが、デザイン、アート、ITといったクリエイティブな視点から新しい仕事を生み出したり、小さな地域経済を整えたりする、自由で自主的なシェアオフィスです。手に職を持った人たちが集まっておもしろいことができたらいいなという場所です。これが限界集落といわれる山の中にあります。岐阜県の本巣市根尾地域というところで、日本三大桜の淡墨桜があります。川が流れていて山があって、猪がいて鹿がいます。人口は1400人ぐらいでほとんどが高齢者です。そんなところにある「GIDS」ですが、普段はオフィスや打ち合わせに使っています。

もうひとつ、この場所の奥が住めるようになっていて、滞在デザイナー制度をやっています。ここにデザイナーに住んでもらい、根尾でフィールドワークをして、こういうことができるのではないかという提案をもらい、実行までやってもらうような制度です。今まで2人の方に滞在してもらいました。

さらに起業塾をやっていて、ここに集まって起業する方法を考えたりするイベントもやっています。実際に起業された方もいて、参加者はほとんど主婦の方です。シェアオフィスとして一緒に仕事をしていて、ジビエのバーを立ち上げるプロジェクトでは根尾の夏祭りでジビエバーをやりました。あとは地域の人たちに来てもらってパーティーをして楽しんでもいます。

 

根尾地域の風景

中原 : なぜこんなことをしているかですが、単純にいうと僕や山口さんが根尾に住んでしまったからです。僕がデザイナーやクリエイターの人が好きで、ものづくりをしている人と一緒に何かやりたいという考え方です。

今日は「働き方」の観点で説明してみようと思います。概念的なことで、普段は考えているだけで人にはいわなかったことを話そうと思います。

 

今、社会で語られている「働き方」というのは産業革命以降、工場に人が勤めるようになってからのことです。それ以前の農業社会は定時に人が来ません。太陽が昇ったら人が来ます。工業社会になって動力が工場につくと、その日に労働者が集まらないと仕事ができません。ラインに人が並ばないと仕事が始まらないので、定時という言葉ができました。

現代は、ベースとなるテクノロジーが変わって、工業社会でやっていた常識が通じないから、皆、おたおたしているという状況です。長い歴史で、どう人が働くということを考えたかということを今、実践しているつもりです。

「はたらく」というのはあまり甘いことではなく、権威に対する服従です。農業の時代は土地を占有していた人たちが王様で、そのもとで働くというのが農業社会の働き方でした。それが王制や封建制です。今の一般的な会社員は上司に従っているのではなく、資本に従っています。農業社会が終わって工業社会になるときに革命が起こって、貴重だったものが土地から資本に変わりました。だから、今、僕らが服従しているものは資本です。株主のいうことが絶対で、経営者は株主の言うことを聞いて労働者を働かせています。しかし今現在、資本を注ぎさえすれば会社が成功するとは思えません。

この資本の代わりとなる「?」のところを考えるのが僕らの課題です。

 

そのときに手がかりとなるのが、政治哲学者ハンナ・アーレント (注1) の「人間の条件」という本です。人間の活動を労働(レイバー)、仕事(ワーク)、活動(アクション)という3つに分けています。一般的にこれらすべてをあわせて「仕事」といいますが、アーレントは完全に分けて考えました。農業時代やローマ時代は、一人の個人の中にこの3つが揃っていました。「労働(レイバー)」は草むしりや耕作など、自然と闘うことをいいます。「仕事(ワーク)」は発明のことで、自然と闘うのが嫌だから鍬を発明した、水車を発明した、ということです。「活動(アクション)」はこうやって働くべきだとか、アゴラの広場に立ってポリスとはこういう場所である、と話すことです。古代のローマ人は、これを全部できる人が市民で、できない人は奴隷でした。レイバーしかできないのは、まさしく奴隷でした。

産業革命が発達したときに、人はレイバーから解放されるはずでしたが、専門分化されたおかげでワークする人は限られた頭のいい人だけになってしまいました。それ以外は全員レイバーをする人になってしまって、余った時間を余暇としてレジャーをするようになりました。それは活動(アクション)とは異なり、アーレントの言っていたどれでもないものになり、働いている時間はすべてレイバーだと考えるようになりました。

僕らがまやかしの仕事だと思っているのはすべてレイバーで、余った時間はレジャーに費やすと思っています。古代人や農業の時代の人たちはそうは思っていなくて、「はたらく」の中にワークやアクションがあって、それは芸術にもなり得ます。自分の幸せがこういうことだ、というのが一人の職業人の中に入っていました。

僕らの活動は、そういうことを考え直したいと思ってやっています。

 

もうひとつの概念の話をします。「Kunst=Kapital」、これはヨーゼフ・ボイス (注2) という現代美術作家の言葉で、Kunstは芸術、Kapitalは資本なのでそれがイコールといいました。彼は芸術を閉じた領域で考えずに、芸術は社会を彫刻することであるといい、政治活動も芸術だといったんです。掃除をするというと、大抵の人はそれを労働だと思いますが、アーティストはこれをアートにできます。片付ける、掃除をする、ということを自分が何者であるかを知るための活動に変えられます。そういう働き方の考え方もできます。

なぜ働き方を考えるときに「繋がろう」と気持ち悪いことばかり言うのかと思っていましたが、貴重なものが土地から資本に移り、そこから才能に移るんです。今の社会ではお金をいくら使っても才能が買えるとは限らない。才能がある人と繋がることがパワーだと気づいているから、コワーキングスペースの「WeWork」に孫(正義)さんが投資するんです。資本の時代にも、メディチ家が王様になるために、土地の権利をローマ法王にお金を払っています。今から考えれば、ヨーロッパの役にも立たない土地に資本を投入する。それはメディチ家がこの時代に生まれたから土地のことしかわからなかったからです。今は資本ではなく、才能が次の希少なものになります。だから人と繋がろうとし、いいものをつくる人の近くで生きる手段を学びます。人の考え方を自分の中に取り入れようとするのが大事なことです。

インターネット以降、AI以降、仕事が奪われるという考え方にしかならないところを、いくつかの概念を広げて考えると、働くということが違う軸に展開していって、新しい「王制」が生まれるようなことだと思っています。

GIDSで一緒に働いてくれるキュレーター、アシスタントと滞在デザイナーも募集しているので、貴重な才能で一緒に何かやれると嬉しいです。

注1: ハンナ・アーレント(Hannah Arendt) 1900年代半ばから後半にかけて活躍したドイツ出身の哲学者、思想家。
注2: ヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys) 1900年代半ばから後半にかけて活躍したドイツの現代美術家・彫刻家・教育者・音楽家・社会活動家。「社会彫刻」という概念を編み出し、彫刻や芸術の概念を「教育」や「社会変革」にまで拡張した。

 

岐阜の山の中でお二人が実際に取り組まれている活動のお話と「はたらく」を大きな歴史的な観点から考えるお話に参加者のみなさんも新たな気づきを得たようでした。隣の人と想いやインスピレーションを共有し、Q and Aに移りました。

 

Q : 根尾に住み始めたきっかけはなんですか。

中原 : 僕の妻の実家があるからです。初めは一人でやろうと思っていましたが寂しくなってきて、大垣で建築設計事務所をやっている方に根尾をデザインしたいと話していたら何人か来てくれました。そこに山口さんがいて一緒にやろうということになりました。

 

Q : 限界集落にいることで、名古屋にいることとの違いなど発見されたことはありますか。

中原 : 根尾に来て地元の人たちと仲良くなるのは王制的な考え方の人たちです。メイクカルチャーやインターネットカルチャーはDIYが好きです。資本制の人たちは生産手段を握られているからDIYはわからない。農家の人たちは全部DIYなので、メイクカルチャーの人たちと話していて仲良くなります。
直観的に思っているのは、資本の奴隷になっている人たちからは、その次の時代はまったく見えないものかもしれないということです。むしろ農家の人たちのほうが先が見えている。情報社会の生産手段はラップトップ1台だったりする。工場に勤めている人は工場の機械がなければ仕事ができないので、一番わからないです。そういうことが気づきとしてあります。

 

Q:岐阜の中で他にどんな活動をされていますか。

山口 : やっていることは先ほどご紹介したことです。あとは大垣にIAMASという大学院があります。そこのコミュニティが強くて、そこの人たちがおもしろいと思ってくれていて、GIDSを利用して研究の拠点にしたり、ここでハッカソンをやったりしています。あと音楽会や根尾のこども向けにワークショップもやっています。VRの得意なデザイナーに来てもらって、VRワークショップもやりました。

 

Q:山梨に山を買った人がいて、何かやれとか、山形の農家と仲が良くて、山形でゲストハウスを作るから何かやれ、といったことを仕事でやっています。遠隔地で住むのは無理となった時に、遠隔で関わるのはどうすればいいでしょうか。

山口:私はもうひとつ会社をやっています。大垣で二人で会社をやっていて、一人は大垣に住んでいます。私は根尾に住んでリモートワークでやっています。大垣に住んでいる人は週に一回、根尾に来るか来ないかですが、担当を分けて一緒にやっています。こういう山間地域にいると他の地域とのコミュニケーションがとりにくいですが、代わりに都会に一人いて窓口になってもらえれば、スムーズにものごとは進むのではないでしょうか。

中原:僕が一番困るのは、山間部で過疎地域なので「何かいいことをしてやろう」と来る人です。住んでいる人は好きで住んでいるのでどうでもいいんです。ゲストハウスで将来儲かったらいいとか、来た人と仲良くなれたらいいとか、自分にモチベーションがあればいい。この施設もそういうプラットフォームにできたらと思います。

 

Q : 今後どうしていきたいか、お二人の想いを聞かせて下さい。

中原 : おもしろい人が来ればいいなということです。それとエコアナーキーのようなところがあるので、電力会社とかをしたいと思っています。

山口 : なるようになればいいと思っていますが、スタッフを募集しているので、やってみたい人がいたらぜひ来ていただきたいです。

 

お話を聞いていたみなさんも、根尾という土地からおもしろいことをはじめて発信しているお二人との軽やかな対話を通して、今までとは違った場所や働き方のあり方にイメージを膨らませている様子でした。
セッションの後半は、ゲストスピーカーも含めたCueに集まった全員でさらに対話を深めていきました。

NAGOYA発・人とつながってユニークに「はたらく」未来人

セッションの後半は、
「未来のNAGOYAの「はたらく」に影響する変化の兆し」
をテーマにテーブルごとに対話をすることからスタートしました。
限られた時間の中での対話でしたが、未来の新卒者はお金よりもシゲキを求めるのでは?仕事への対価は感謝や刺激、達成感などに変化していくのでは?従来の組織は崩壊して価値観を軸としたつながりが生まれていくのでは?など、多様な「兆し」が発見されました。

続いて、
「未来のNAGOYAの「はたらく」についてどんな欲求がでてくるのだろうか?」
という問いに答えながらグループをつくり、どのような人が10年後のNAGOYAでユニークに働いているかを描きました。

今回、描かれた未来人は4人。
さまざまな「はたらく」や仕事に対する想いを持ち、周囲の人とのつながりのあり方も「巻き込む」「惹きつける」「リーダーシップをとる」など多様でユニークな人物像が描かれました。

ゲストの方たちの「はたらく」の実践やそこへの想いに触れることからスタートし、10年後の未来のNAGOYAで活き活きとはたらく人物像をみなさんが熱量を持って描いていたのが印象的なセッションとなりました。

次回のはたらく×Cueでのセッションでも、想いや期待のこもった10年後のNAGOYAのユニークな「はたらく」を描いていけたらと思います。

 

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