セッションは、6月に開催したセッションと同様に、参加者どうしで「私が一押しするNAGOYAのユニークなところは?」について、カジュアルな雰囲気で語り合うところからスタート。
当日、共有をしたNAGOYAのユニークなところを一部ご紹介すると、
・食べ物が魅力
・自然(山川)が近い
・地元に根をはった人・企業が多い
・お祝い事が派手
など、この日もさまざまな視点からのNAGOYAの特徴が挙がりました。
ペア対話の次は、ゲストにご登壇いただき、NAGOYAから世界を見据えた10年後の「はたらく」を考えるヒントをお話いただきました。ゲストは、豊田市のトヨタケ工業株式会社 代表取締役社長の横田幸史朗さん。ご自身の経験に基づく興味深いお話にみなさん熱心に耳を傾けていました。
現在、トヨタケ工業株式会社の社長とOPEN INABU実行委員会の代表責任者をしています。2011年から実家のトヨタケ工業に入りました。トヨタケ工業は、愛知県の中山間地域の豊田市稲武町の山の中にあります。そこでOPEN INABU実行委員会という組織を立ち上げ、稲武には移住定住で働くところがあるということを発信しています。
名古屋育ち。友人の母親が英語の先生をやっていて、高校時代にアメリカに1か月間短期サマーステイしました。「アメリカはすごい!」と感化されて、翌年1年間、YFUの高校生留学派遣プログラムで交換留学に行きます。行き先を選べず、メキシコとの国境の方のフェニックスに行き、貧困層も多く、サバイバルな1年間を送りました。
帰国後は大学に進学し、サイクリング部に入り北海道でキャンプをしたり、卒業旅行はシベリア鉄道で中国からロシア、北欧をバックパックひとつで回りました。
卒業後、海外営業をしたいということでブラザー工業株式会社に入社。ITの部署に配属になりましたが、当時日本はアメリカに対して遅れていました。ヨーロッパでのITシステムの活用を進めろという指示でイギリスに赴任し、6年半在住しました。
イギリスはマウンテンバイクの聖地とも言われていて、いいトレイルがあるので自転車で走ったりしていました。仕事はITシステムの導入のフォローアッププロジェクトをしていました。
日本に帰って来るとリーマンショックが起きていて、実家の経営も大変になっていたこともあり、2011年にトヨタケ工業に移りました。職場は豊田市稲武地区で、一気に山の中に行きます。
トヨタケ工業ではマレーシアとつながって海外生産の委託を始めています。同時にOPEN INABU PROJECTを始めて、地域と世界がつながってきています。
今日は、自分のこれまでの世界とのつながりの中で思ったり見たことを失敗談も交えながら、5つのテーマで話をします。
イギリスにいたときに思ったことですが、17時になると渋滞しているにも関わらず、皆帰っていきます。
歯医者さんに歯が痛くて電話をすると、3ヶ月後はどうですかといわれます。死にそうだと騒ぐと「いらっしゃい」といわれますが、いざ行くと急患が入ったのでみなさんの予約は遅れる、と札を出されます。
歯医者だけかと思ったら、そうではありません。自転車もシーズンオフにオーバーホールに出そうとしたら、「今シーズンは予約で一杯だから来シーズンでよいか?」といわれます。予約制なので、早く予約しておかないといけないのです。
働いている人からすると、定時で埋まる仕事を時間で区切っていっているので、残業しなくてよい。その代わり半年先まで仕事が埋まっている状態になります。急なお願いはしないようにしよう、虫歯にならないようにしよう、自転車の整備は自分でして予約は早めにしておこう、というようになります。
振り返ってみると、自分の仕事はなぜルーティンで終わらないのか?お客さんに振り回されていないか?なぜ日本人はこんなに忙しくしているのか?という疑問が湧いてきます。
働き方改革と言われていますが、日本古来のガラパゴスの象徴という気もします。長時間労働や残業、休日出勤など、特定の人に負荷がかかることは実際にあります。
どうしたらいいか?通常業務とイレギュラー処理を分けて考えるとよいと思っています。
例えばマネージャーの仕事で通常作業だけだと定時より時間を取られることはありません。イレギュラー処理が加わって、120%になっています。イレギュラー処理はどうして起きているか?社内で誰かが失敗したことのフォローアップや、お客さんからの納期催促などへの対応があります。
また、日本は儒教の国なので、男性と女性の働き方に違いがあります。トヨタケ工業は縫製の会社で、女性の社員が8割。家庭で最後に頼られるのはお母さん。こども、夫、親の面倒も見て、終わったかと思うと孫が生まれて、娘の面倒を見るのもお婆ちゃん。ずっと忙しい中で仕事に来ています。男性は仕事と家庭をわけています。
最近、副業ということがいわれています。キャリアとしての副業で8:2の割合で副業をしましょうと。稲武には田んぼや畑もあって、稲刈りの時期などは忙しいです。介護で夜寝られないときは生産性が上がらない。もっとこどもの教育にも向き合わなければならない。ライフスタイルは多様化しいてます。少子化によって負担が若者にかかってきています。少子化の問題は日本で特に進んでいるので、立場として特殊だと思います。
ロフトは生活雑貨のチェーンストアのロフトのことです。
出張から帰って来て、ロフトに行くと棚にいっぱいものが置いてあって日本のお店はすごいと思いました。例えば、鉛筆削りにしても種類がたくさんあって、これだけ作っている人がどこにいるんだと思います。ヨーロッパでは大して種類がありません。日本ではたくさんの種類を売っていますが、会社が多過ぎるか、多様性の尊重と見るべきか。どこも一生懸命ものを作って売ろうとしています。エネルギーはすごいですが、シーズが強いです。落とし所のないマーケットに向けて突っ走っている傾向はないでしょうか?顧客のニーズに集中することはできないでしょうか?
相手のニーズを知る、相手のできることを知る、というのは大事です。
例えば、メールをする相手を知る。最近、顔も知らない人とメールだけで仕事をしていることはないですか?とくに海外だと「クリスティ」という名前だけで男か女かもわからない状態があります。メールだと相手のできることもわからない。お任せでやれると思ってしまいがちです。知らない人に対してどうしても横暴になってしまいます。
私は中小企業の社長ですが、ヨーロッパで小さい販売会社だとおばちゃんが総務、経理、人事を全部やっていて大変です。
今、マレーシアの企業がパートナーの仕事に関して、若手の中途採用で新卒2年目ぐらいの人間を海外担当で採用しました。最初の仕事は出張で、入社翌日にチケットを取って一緒に現地に行きました。仕事の中身より仕事の相手を知ることの方が大事だと思って連れて行きました。行ってみると、近い世代の女の子が担当で、お互い話も盛り上がりました。
トヨタケ工業はトヨタの系列の会社なので、モノづくりのコアなところを勉強する機会があり、すごいと思うことが結構ありました。モノづくりにおける考え方、哲学的なトヨタ生産方式とか堅苦しい感じもしますが、困った時に見ると本当にすごいと思います。
それを実践して作る現場を持っているということはトヨタケ工業の強みです。問題解決手法としてQCサークルなどがありますが、問題を明確にしてデータで示し、目標値を設定するというステップがあります。この手法は後戻りのない確実な仕事の仕方、そのものです。トヨタの手法に関する書籍にも書いてあります。
整理整頓も大事なこと。「いるもの」と「いらないもの」をわけて、「いらないもの」を捨てる。現場では毎日使うものが「いるもの」で、それ以外はいらないと判断して捨てる。残ったものを探しやすいようにしまうのが整頓。家の冷蔵庫も、小学生の引き出しも同じです。無駄のない超効率的な仕事が徹底されています。これは日本人の価値観。丹精込めた仕事、人徳や信頼で仕事をするというのは大事な文化だと思います。
この前、ある先生が言っていましたが、あえてマニュアル化できない仕事も大事。マニュアル化できるものは簡単に真似されて海外に持っていかれてしまう。
1から5の話を総じて考えると、人手不足の中で解決しないといけないことがあります。
名古屋駅周辺にいるとあまり感じませんが、少し外に出ると、夏祭りが終わると人がいなくなる状況です。他の国を見ると、フィリピンでは田舎から人が増えてきて、2050年まで人口ボーナスが続くと言われています。しかし、ほとんどが派遣で3か月で切り捨てなので、人が育たない環境です。人材の使い捨てでもったいない。一つの作業に前任者、後任者、スーパーバイザーのように3人ぐらい人手をかけています。
インドも今後、中国を抜いて世界人口一位との予測があります。中国もアジアインフラ投資銀行と一帯一路政策で現代の帝国主義になっています。その中で日本は少子高齢化。ただでさえ忙しいのに、人手不足になっていきます。
いろいろな考え方があると思いますが、これからは、会社というチームとフリーエージェントとしての個人という住みわけがいると思います。会社に縛られずに個人が活躍しながら、チーム力を発揮する、という取り組みをしていかないといけないのではないでしょうか。会社の中で一人を囲ってしまうと他のことができない。リソースのグリッド化をして外のことも中のこともやる。勝手にオープンイノベーションになって刺激も受ける。まさに今日この場のようなことがされていく必要があると思います。
横田さんのインスピレーショントークに引き続き、お話からシゲキを受けた会場のみなさん全員で円形になって座ります。場所を入れ替わりながら、最前列の方が質問し、円の中心質問に座っていただいた横田さんにお答えいただくかたちで今日のテーマを深めていきました。
セッションの後半は、前回と同じように、NAGOYAのユニークな「はたらく」を体現する未来人を描きました。
「未来のNAGOYAの「はたらく」に影響が大きなことは?」
この問いの答えを共有しながらグループを作り、どのような人が10年後のNAGOYAで世界を見据えてユニークに働いているか、グループごとに描きました。
さまざまな対話と共同作業の結果、描かれた未来人は6人。ワークとライフのとらえ方、本業だけでない活躍の場の考え方、などさまざまな視点から個性的な人物像が描かれました。
横田さんのシゲキにあふれるお話からインスパイアされ、活気あふれるワークが繰り広げられ、まだまだ話したい!描きたい!という雰囲気の中でセッションは終了となりました。
次回のはたらく×Cueでのセッションでも、今回とは異なる新たな視点から10年後のNAGOYAのユニークな「はたらく」を描いていきます。
REPORT
今回は、金城学院大学の2年生16人が授業「ソーシャルウーマンプロジェクト B」の一環でCueにやってきました!
「ソーシャルウーマンプロジェクト B」では、「共創」をテーマに、身近な困りごとや社会課題に対する解決方法の生み出し方について、グループワーク、プレゼンテーション、フィールドワークをまじえながら学び、現代社会におけるさまざまな課題を自分ごととしてとらえ、発想力豊かにその解決方法を仲間と一緒に考えていくプロジェクト学習です。そのうちの3回にわたりCueと実施します。今回はフィールドワークの初回です。
当日の様子をインターンシップ生の髙橋あひろがレポートします。
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REPORT
現在金城学院大学さんのソーシャルウーマンプロジェクトBという講義にCueが一部かかわっています。金城学院大学 人間科学部コミュニティ福祉学科の講義である、ソーシャルウーマンプロジェクトB。受講者の皆さんに共創という概念を理解・実感していただくための第一歩として今回、 MENNOLU LABO ・Cueの見学、また感じたことの共有を実施しました。
インターンシップ生の秀徳颯斗がレポートします。
※ソーシャルウーマンプロジェクトBとは
「共創」をテーマに、身近な困りごとや社会課題に対する解決方法の生み出し方について、グループワーク、プレゼンテーション、フィールドワークを交えながら学びます。現代社会におけるさまざまな課題を自分ごととしてとらえ、発想力豊かにその解決方法を仲間と一緒に考えていくプロジェクト型学習です。
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REPORT
名古屋市立大学佐藤研究室の学生方と株式会社カムロの方が、改装されて新しくなったCue・MENNOLU LABOにやってきました!
はじめまして!私は、名古屋市立大学芸術工学研究科修士1年の高橋あひろです。
学部時代も名古屋市立大学に所属していて建築都市デザインを学んでいました。卒業論文では、Cueで実際に行ったワークショップを研究対象とし、ワークショップにおいて参加者の身体的自由度や用いる什器が議論の盛り上がりにどのように影響しているか、について執筆しました。大学院でも同じテーマを引き続き研究しています。
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「これからのはたらく」を知りたい方、考えたい方、つくりたい方、相談したい方、見学したい方、仲間が欲しい方・・・
もし少しでも「ピン」ときたら、お気軽にCueにおたずねください。